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2010年12月18日

「民業圧迫」薬店編⑬

僕と西谷は極度の緊張状態に入っていた。
解約の手助けをするというのは、保険業法的にギリギリの線だったからだ。


もし、このS氏が僕らが保険業界の人間だと知り、法的手段をとったなら僕らは危うかった。
繰り返すが僕らは金融庁の管轄のもとに処分を受ける。


S氏及び担当者は郵政事業庁の判断となる。


彼ら側が悪いことは歴然としていても、僕らに勝ち目はなかった。
僕らの保身という意味で大変なリスクを冒そうとしていたのだ。




「なぜ答えないんですか。貯金よりいいと言われて契約したのに元本を割っていた理由を聞いているんですよ。」
もう一度詰めてみた。


「でも保障はしっかりされていたわけですからね~」
徹底してはぐらかす。




怒りを抑えながら、次の問題に移った。

「では次の時期の契約ですが、担当の方は相続対策で勧めたようです。しかしKさんのお母さんの場合財産の規模からして、そもそも相続税は必要ありません。
にもかかわらず、生前贈与という形で相続対策をとっています。
ただただ売らんがために、相続を無理矢理持ち出したのでしょうか?」


「これは担当に聞いてみないと分かりませんね~。」
S氏は一瞬驚きの表情を見せた。


それは当然で、相続問題が発生しない人に相続対策として売ったなどというデタラメなケースは、そうはあるはずもないからだ。
目的は一刻も早く解約することなので、この場に担当者を呼びつけることを僕は要求しなかった。


守備範囲外のことを指摘され、S氏はもう引きとめは無理だと思っていることが表情から窺えた。
最後の指摘に移ることにした。





「次に被保険者の署名と捺印の件ですが、多くの人は長崎、東京と県外で、契約時その場にはいなかったと聞いています。
くしくもそこの壁に貼ってある禁止事項の代筆をやったわけですが、これはどういうことでしょう?」


同じ業界の人間だと気づかれないため、なるべく専門用語を使わないようにしていたが、このあたりになるとすでにS氏は気づいていたと思う。


解約は成功してもその後の報復の可能性は残されていた。


僕の心理も興奮状態に入り、まさに「死なばもろとも」という状態だった。  
Posted by 生命保険認定士 at 08:00Comments(0)