2011年01月03日
「嫁のお父さん、取り消し編」⑬
3日後、Y氏から電話が入った。
「電話で結果をお伝えするのも失礼なので、お時間をいただけないですか?」
という内容で、その翌日またファミレスで会った。
話を聞く前からY氏のやや沈んだ表情で結果は分かった。
「上司は真剣に話を聞いてくれ、最後の判断は私に任せてくれたんですが、主人に反対されたんです。その理由を聞いていると私も頷くところがあり、納得してしまったんです。」
上司の反応は意外だった。
本当にY氏を可愛がってきたんだろうということが感じられた。
Y氏のまっすぐな人柄が善き人との出会いを引き寄せたのだろうとも思った。
「ご主人は何とおっしゃっていたんですか?」
「はい、私には大手という看板で営業をしてきたところがあり、そんなに力があるとは自分でも思っていないんです。まずはそこを指摘されまして、本当にやっていけるかどうか不安がよぎりました。今の会社の新人指導も永遠に約束されたものではなく不安だらけなんですが、少なくとも現在やっている分だけ不安は少ないんです。」
非常に分かりやすい説明だった。
Y氏の言ったことを整理するとこうだ。
1.大手という看板から、中堅という看板に下がる。
2.独立して自分ひとりの状態を経験したことがないので、戸惑いがある。
3.X社に入社した時は、ある程度の顧客リストを渡され、それを回っていたら結果が出たが、Z社にはそれがなく、一から自分で開拓しなければならない。
4.現在のX社の顧客に対しZ社の案内をするのは、やや抵抗がある。
どれも納得いく説明だったが、3番にはハッとした。
僕は少し考え、なるほどと思った。
保険業界はフルコミッション(完全歩合給)なので、退職者が非常に多い。
外資系も例外ではないが、入社する人間のほとんどは妻帯者で30歳以上の男性、簡単に辞めるわけにはいかない。
一方、主婦層が多く入社する会社の退職率は高いという。
しかし、ある程度の契約は挙げて辞めるので、その顧客が新人に割り当てられるという訳だ。
さらに、外資系には「転換」という仕組みはないので、退職者の顧客が割り当てられたとしてもすぐにメリットは発生しないばかりか、他の商品に変えるとペナルティを課せられることもある。
片や日本社には「転換」制度があるので、退職した人の顧客に新商品などの案内をすれば成績になるという訳だ。
結論としては、いくら良い商品を扱うことが出来ても、契約を挙げられなければ意味がないとY氏は言いたいのだ。
最も過ぎるほど最もなので、僕は言った。
「なるほど、とてもよく分かりました。でも、ここまで真剣に考えてくれてありがとう。」
「いえ、とんでもありません。こんな話をしていただいて私のほうこそ感謝しています。ただですね、もう一つお伝えしようと思っていたことがあります。今回はお断りしたのですが、状況によっては本当にお世話になることがあるかも知れません。その時はどうぞよろしくお願いします。」
最後まで真摯な対応をY氏は貫いた。
その対応に僕の心も爽やかになり、「本当にもったいない人だ」という気持ちがしみじみ湧いてきた。
「ではYさん、もう一段階だけ手順を踏んでおきませんか? 僕も同席しますから、Z社の人間と一度会っておいてください。現在のYさんの気持ちは前もってきちんと伝えておきますから。」
後日、Z社の担当者と引き合わせ、いまだに時々連絡を取り合っているようだ。
Z社の担当者が僕に「Yさんは本当に素晴らしい人ですね!」と語ったのが、まだ記憶に新しい。
(完)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
追記
この実話で僕が言いたかったことをまとめます。
1.保険会社によって、商品力には歴然とした違いがある。
2.従って、商品によっては「三方よし」が成り立っていない。
3.いまだに保険会社の知名度により加入する人が多くいる。
4.保険会社によって、知識レベル、教育レベルに雲泥の差がある。
5.その教育レベルの差が原因で、お客様に多大な迷惑をかけることがある。
6.大手には顧客を維持する方法と、新人の顧客獲得の仕組みが出来上がっている。
それは「転換制度」が存在するからであり、一体「転換制度」は誰のために存在するのかという疑問が生じる。
7.これらの問題を解決していくには、中堅以下の保険会社スタッフが頑張らなければならないのは当然だが、一般の方々の知識が向上することが必須条件。
だから僕はこのブログを書いているのですが、書きながら「自分も更に襟を正さなければ」と思っています。
「電話で結果をお伝えするのも失礼なので、お時間をいただけないですか?」
という内容で、その翌日またファミレスで会った。
話を聞く前からY氏のやや沈んだ表情で結果は分かった。
「上司は真剣に話を聞いてくれ、最後の判断は私に任せてくれたんですが、主人に反対されたんです。その理由を聞いていると私も頷くところがあり、納得してしまったんです。」
上司の反応は意外だった。
本当にY氏を可愛がってきたんだろうということが感じられた。
Y氏のまっすぐな人柄が善き人との出会いを引き寄せたのだろうとも思った。
「ご主人は何とおっしゃっていたんですか?」
「はい、私には大手という看板で営業をしてきたところがあり、そんなに力があるとは自分でも思っていないんです。まずはそこを指摘されまして、本当にやっていけるかどうか不安がよぎりました。今の会社の新人指導も永遠に約束されたものではなく不安だらけなんですが、少なくとも現在やっている分だけ不安は少ないんです。」
非常に分かりやすい説明だった。
Y氏の言ったことを整理するとこうだ。
1.大手という看板から、中堅という看板に下がる。
2.独立して自分ひとりの状態を経験したことがないので、戸惑いがある。
3.X社に入社した時は、ある程度の顧客リストを渡され、それを回っていたら結果が出たが、Z社にはそれがなく、一から自分で開拓しなければならない。
4.現在のX社の顧客に対しZ社の案内をするのは、やや抵抗がある。
どれも納得いく説明だったが、3番にはハッとした。
僕は少し考え、なるほどと思った。
保険業界はフルコミッション(完全歩合給)なので、退職者が非常に多い。
外資系も例外ではないが、入社する人間のほとんどは妻帯者で30歳以上の男性、簡単に辞めるわけにはいかない。
一方、主婦層が多く入社する会社の退職率は高いという。
しかし、ある程度の契約は挙げて辞めるので、その顧客が新人に割り当てられるという訳だ。
さらに、外資系には「転換」という仕組みはないので、退職者の顧客が割り当てられたとしてもすぐにメリットは発生しないばかりか、他の商品に変えるとペナルティを課せられることもある。
片や日本社には「転換」制度があるので、退職した人の顧客に新商品などの案内をすれば成績になるという訳だ。
結論としては、いくら良い商品を扱うことが出来ても、契約を挙げられなければ意味がないとY氏は言いたいのだ。
最も過ぎるほど最もなので、僕は言った。
「なるほど、とてもよく分かりました。でも、ここまで真剣に考えてくれてありがとう。」
「いえ、とんでもありません。こんな話をしていただいて私のほうこそ感謝しています。ただですね、もう一つお伝えしようと思っていたことがあります。今回はお断りしたのですが、状況によっては本当にお世話になることがあるかも知れません。その時はどうぞよろしくお願いします。」
最後まで真摯な対応をY氏は貫いた。
その対応に僕の心も爽やかになり、「本当にもったいない人だ」という気持ちがしみじみ湧いてきた。
「ではYさん、もう一段階だけ手順を踏んでおきませんか? 僕も同席しますから、Z社の人間と一度会っておいてください。現在のYさんの気持ちは前もってきちんと伝えておきますから。」
後日、Z社の担当者と引き合わせ、いまだに時々連絡を取り合っているようだ。
Z社の担当者が僕に「Yさんは本当に素晴らしい人ですね!」と語ったのが、まだ記憶に新しい。
(完)
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追記
この実話で僕が言いたかったことをまとめます。
1.保険会社によって、商品力には歴然とした違いがある。
2.従って、商品によっては「三方よし」が成り立っていない。
3.いまだに保険会社の知名度により加入する人が多くいる。
4.保険会社によって、知識レベル、教育レベルに雲泥の差がある。
5.その教育レベルの差が原因で、お客様に多大な迷惑をかけることがある。
6.大手には顧客を維持する方法と、新人の顧客獲得の仕組みが出来上がっている。
それは「転換制度」が存在するからであり、一体「転換制度」は誰のために存在するのかという疑問が生じる。
7.これらの問題を解決していくには、中堅以下の保険会社スタッフが頑張らなければならないのは当然だが、一般の方々の知識が向上することが必須条件。
だから僕はこのブログを書いているのですが、書きながら「自分も更に襟を正さなければ」と思っています。
Posted by 生命保険認定士 at
08:00
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