2010年12月30日
「嫁のお父さん、取り消し編」⑨
さて、話を戻そう。
僕が保険業法を持ち出したのは、転換や乗り換えでは「契約者に不利となることの説明」を義務付けられてからで、元々それを引き出すのが目的だった。
しかし、先方の口から聞くことが出来なかったので、僕から言うこととなった。
「転換では契約者に不利になることを説明しなければなりませんが、知っていますか?」
「あ・・・はい。」Y氏は歯切れが悪くなって来た。
「では、数多くあるのですが一つでも言ってください。」
「・・・・・」
「え? 一つも言えないんですか? ならば僕が一つ一つ質問しますので答えてください。 まずは予定利率が高い場合の契約者におけるメリットを説明してください。」
これに関しては、さすがに社内の教育係りをしているだけあって、Y氏は即答した。
「同じ保障なら保険料が安いことです。」
見事に正解だった。もう一つあるのだが、それを追及するのは割愛した。
「その通りですね。 では、この新しい保険に転換する時、予定利率が下がることを説明しましたか?」
たった一つ目の質問で場はクライマックスへと達した。
説明していないだろうという確信が僕にはあった。
Y氏は数秒沈黙し、観念したかのように口を開いた。
「していません。」
僕は支社長に目を向け言った。
「まだ質問事項はたくさんあるのですが、必要ですか?」
「いいえ、必要ありません。」
これで万事休すであることは同業者であれば当然分かっている。
僕はさらに付け加えた。
「今日の会話はすべて録音しています。ですから今日の会話は言った言わないの話には決してならないことをご承知おきください。 そして会話の流れを的確に本社にお伝えください。」
支社長が答えた。
「承知致しました。 一応本社には伝えますが、私が承諾すると言えばほぼ間違いなく、取り消し及び復旧は出来ると思います。 給付金の払い戻しなど複雑な計算もありますので、少しお時間をください。」
決着はついたので、僕の正直な気持ちをY氏に伝えた。
「正直に答えてくれてありがとう!」
突然、Y氏の目から大粒の涙がこぼれ始めた。
泣きながらもY氏は心中を語った。
「いいえ、大変ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした。どうぞこれからもよろしくお願いいたします。」
頭を深々と下げた時の肩が小刻みに震えていた。
知識不足や勉強不足は誉められることではないが、Y氏は営業パーソンとして優れていると僕は思った。
計画を達成できたことよりも、Y氏の対応に僕はいささか感心し、
『こんな子がX社にいるのは勿体ない』と思い始めていた。
今回のY氏の非は、Y氏自身の問題というより会社の体制の問題だと僕は見ていた。
誠実な対応や明確な話し方は、むしろY氏が持って生まれたものである。
そのY氏の特質を今の会社が存分に活かしているとは到底思えなかったのだ。
その辺に対する彼女の心中を僕は是非とも聞いてみたくなった。
そして後日、スカウトを目的としてY氏とファミレスで会うことになる。
僕が保険業法を持ち出したのは、転換や乗り換えでは「契約者に不利となることの説明」を義務付けられてからで、元々それを引き出すのが目的だった。
しかし、先方の口から聞くことが出来なかったので、僕から言うこととなった。
「転換では契約者に不利になることを説明しなければなりませんが、知っていますか?」
「あ・・・はい。」Y氏は歯切れが悪くなって来た。
「では、数多くあるのですが一つでも言ってください。」
「・・・・・」
「え? 一つも言えないんですか? ならば僕が一つ一つ質問しますので答えてください。 まずは予定利率が高い場合の契約者におけるメリットを説明してください。」
これに関しては、さすがに社内の教育係りをしているだけあって、Y氏は即答した。
「同じ保障なら保険料が安いことです。」
見事に正解だった。もう一つあるのだが、それを追及するのは割愛した。
「その通りですね。 では、この新しい保険に転換する時、予定利率が下がることを説明しましたか?」
たった一つ目の質問で場はクライマックスへと達した。
説明していないだろうという確信が僕にはあった。
Y氏は数秒沈黙し、観念したかのように口を開いた。
「していません。」
僕は支社長に目を向け言った。
「まだ質問事項はたくさんあるのですが、必要ですか?」
「いいえ、必要ありません。」
これで万事休すであることは同業者であれば当然分かっている。
僕はさらに付け加えた。
「今日の会話はすべて録音しています。ですから今日の会話は言った言わないの話には決してならないことをご承知おきください。 そして会話の流れを的確に本社にお伝えください。」
支社長が答えた。
「承知致しました。 一応本社には伝えますが、私が承諾すると言えばほぼ間違いなく、取り消し及び復旧は出来ると思います。 給付金の払い戻しなど複雑な計算もありますので、少しお時間をください。」
決着はついたので、僕の正直な気持ちをY氏に伝えた。
「正直に答えてくれてありがとう!」
突然、Y氏の目から大粒の涙がこぼれ始めた。
泣きながらもY氏は心中を語った。
「いいえ、大変ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした。どうぞこれからもよろしくお願いいたします。」
頭を深々と下げた時の肩が小刻みに震えていた。
知識不足や勉強不足は誉められることではないが、Y氏は営業パーソンとして優れていると僕は思った。
計画を達成できたことよりも、Y氏の対応に僕はいささか感心し、
『こんな子がX社にいるのは勿体ない』と思い始めていた。
今回のY氏の非は、Y氏自身の問題というより会社の体制の問題だと僕は見ていた。
誠実な対応や明確な話し方は、むしろY氏が持って生まれたものである。
そのY氏の特質を今の会社が存分に活かしているとは到底思えなかったのだ。
その辺に対する彼女の心中を僕は是非とも聞いてみたくなった。
そして後日、スカウトを目的としてY氏とファミレスで会うことになる。
Posted by 生命保険認定士 at
08:00
│Comments(2)